10 アスファルトの伝言







…ふわふわと。


疲労の溜まった俺の体は。


まるでのぼせているような感覚で。



…疲れたんだな、俺。



扇谷の腕の中で。

もうそろそろ涙は止まって。


「………」


扇谷が、様子を伺うように、俺の顔を覗き込んでいる。


「…大丈夫だよ、もう」


そう言うと、彼は安心したように微笑んだ。



…しかし、そうして離れようとする扇谷のジージャンを、

掴んだまま離せない俺がいた。



扇谷は。

首を傾げてしばらく瞬いていたけど。


もう一度座り直して、俺の背に腕を回していた。



そして髪を撫でたり、何なり、しながら。


そこらへんを見渡して、石ころを探していた。


「……」


無言のまま石ころを握った扇谷は、


見るからに下手な字で、ガリガリと。


アスファルトに文字を書き出した。




 エ

 イ

 ち

 ゃ

 ん

 が

 す

 き





くっと、笑みが零れた。


「知ってる…知ってるって」


それでも、扇谷はにこにこと笑って、文字を指差す。


「知ってるってば」


腕を伸ばして、扇谷の頭を撫でてやる。



「…ありがとう」



そうして俺は

にっこり笑って。




暖かな胸を持つ君に




最上級の


感謝の言葉を





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