11 始まり







ピピピピピ…

「…んん…」


ばしんと、目覚し時計を叩いて止める。

「ふあ…」

カーテンを開けると、否応無しに光が目に飛び込んで来て。

「眠っ!」


言いつつ俺は、ベッドから起き上がる。



「行ってきまっすー」

一人暮らしなのに、行って来ますを言う癖はまだ取れなくって。

いつものように鍵をかけて、アパートを飛び出す。



「エイちゃんおはよー!!」

「おーはよ〜」

今日もまた、色んな人が声をかけてくれる。

なるべく、なるべく、全部に返事を返すようにしながら。





―――思えば。


去年の学園祭。

アレは始まりだったんだと思う。


「エイちゃん」なんて呼ばれるようになった、始まり。

色んな人に、存在を知ってもらった、始まり。

今の俺に通じる、全ての、始まり。





そして。



今年の学園祭も、きっと始まりだったんだろう。




「…ユウ?」




俺の後方で、人影が動く。




「出といで?」




それは黒いサングラスに、黒い帽子を被った、長身の男。





「ほら行くよ」






こうして俺が差し伸べた手を。






君が握り締めれば。







それは始まりの合図。







end


後書


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