2 彼の視線の先





「じゃあ今日はココまで。お疲れ様でした」


ガタガタと席を立つ音がする。

…ふぅ。5講終了。

2年になるとやっぱり、専門科目が増えて、大変だな。

クリアケースを持ち上げ、教室を後にする。


「…?」

…また、誰かいる気がする。

(誰…?)

外はもう真っ暗になっている。

学内の照明だけで顕になっている廊下を、改めて見返す。

誰もいない…。

気のせい?

そう思って背を向けると、やっぱり人の気配がする。

間違いない…人に見られることが多くなったから、こういう点ではかなり敏感なんだ。


5講後ということだけあって、学内に人はほとんどいなくなっていた。

この廊下に、俺と…後ろに居る、誰か。2人きり。


―――怖い。


初めて思った。



逃げない…と。



俺は夢中で走っていた。

早く…帰ろう。帰って…鍵をかけて…。


足音がズレていた。

追ってきてる…!



以前ワケワカンナイ所に連れ込まれそうになった経験を思い出して、

この展開は危険だと、俺は痛切に感じていた。

早く、早く、逃げないと。


それから走って。走って。

走って。

ついに奴の足音が止まった。

「…!?」

思わず俺も足を止めて、後ろを振り返った。

そいつは。



黒いサングラスに、黒い帽子。

ジージャンを着た長身の男で。



しばらく俺を見ていたかと思うと、たっと身を翻して去ってしまった。


唖然とする俺をひとり残して。







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