3 普通じゃない大学生活
「…それストーカーじゃない?」
「まぁ…普通に考えたらそうだよな」
朝一でアキトに昨日のことを報告した俺は、今朝も警戒しまくりで。
施錠したドアを恐る恐る開け、家を飛び出した。
もし奴が居ても大丈夫なように大学まで全力疾走してきた。
これでも背は高いほうだし、自分で言うのもなんだけど、足の速さには自信がある。
途中「エイちゃんおはよー!」って声をかけてくれる人が何人も居たけど、
申し訳ないながら手を振るしかできなかった。
そのまま1講目の教室に滑り込んで、今に至るわけだ。
「警察にでもいったほうが良いんじゃない?」
「…そこまでオオゴトじゃないと思うけど」
女の子ならまだしも。
「…まぁ、しばらく様子、見てみるよ」
1講目が終わる。
朝の大学は賑わっていて。
講義に急ぐ奴とか。レポート取り組む奴とか。外で遊んでる奴とか。サークルに打ち込む奴とか。
みんなそれぞれ、自分の大学生活を満喫してる…そんな感じ。
俺の場合はこうやって学内の前庭を歩いてたりすると…
「エイちゃーんvv」
声をかけてくれる人がいたりする。
「おーはよー」
全然知らない人なんだけど、挨拶を返す。
きっとコレってすごいことなんだなぁって思う。
…まさに…「普通じゃない」大学生活。
それもイイよね…そんな風に考えながら、少し機嫌が良くなった俺は煙草を咥えて。
「さァて、サークルサークル♪」
「お疲れ様で〜す」
「おぅ、エイちゃんいいところに来た。ほれこっち来なさい」
そう言ってぱたぱたと手招きする。
この先輩は、去年の学園祭、一緒にバンドで出場した方で。
「何すかー?」
「…うん、今年の学園祭のことなんだけどね?」
先輩はニコニコして言う。
「…はァ」
「エイちゃんにはちょっと辛いかな?ファンが増えちゃうかも」
「ファンかどうかは知らないですけど。また機材借りるんすよね?」
そう、それが一番の問題点。
去年だって先輩が何度か頼んでやっと実現したステージだったから。
俺が所属してるのは音楽研究部で、元々ステージ出場するような部活じゃない。
だからバンド系サークルに機材を借りに行かなきゃならない。
ただそっちのサークルがあんま貸したくないってのが分かるから、それが難点なんだよな。
「また先輩苦労しちゃいますよね…」
先輩は尚ニコニコ笑っている。
「エイちゃんが行けば貸してくれるって」
…え。
「えぇー!!俺あそこのサークル何度も勧誘されてんすよ!?自分から出向くなんて…」
「オネガイ!!エイちゃんパワーでねじ伏せてしまえvvv」
先輩は謎の可愛いポーズで誤魔化している。
…はぁ。
「普通じゃない」大学生活。
イイかもしんないけど、やっぱ大変だァ…。
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