4 1年越しの色々





今年もこの時期がやって来た。

学園祭。

思えば…怒涛の1年だった。


「搬入完了ですか?」

「OKです、リハお願いします」

「ではバスドラから…」


このステージ設営も去年とおんなじで。

ただ違うのは、去年ここに立っていたのは「エイちゃん」なんかじゃなかったってこと。


「ギターお願いします」


指示に従い、ギターをかき鳴らす。


明日は上手く…弾けるかな。

お客さんが、大勢、来るかもしれない。

期待して、いるかもしれない。


そんな予感が、小心者の俺を、追い詰めていた。





「エースケっ!」

入り口から手招きしているのは、アキトだった。


「ほれ差し入れ!準備で疲れてるだろー?」

「あぁ…アリガト」


アキトは何故かくすくすと笑いながら俺を眺めている。


「…何さ」

「エースケは不思議だよな〜」

「まぁ、単純明快ではないと思うよ」

「そうじゃなくて」


びしっと指さしアキトは言う。

「そんなぱっとしない表情のくせに。ギター持つと豹変する」


…はぁ、そうなの?


「だから水面下のファンが表に出てきちゃったんだよな〜」

「水面下?」

「んー。お前は知らないだろうけど。別に学園祭で突然増えたわけじゃないんだぞ?」


…まさか。

「周りの騒ぎに感化されてるだけじゃないのか?」


アキトはわざとらしい溜息をつく。

「ホントにお前は馬鹿だな〜まっ良いか!明日頑張れよ!見に来るからなっ」


まっ良いかって…良いんだ…。




猛スピードで去るアキトを見送りながら、頑張らないとなぁと、俺は改めて思っていた。







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