5 ひとり舞台







――鳥のさえずりが聞こえる。


今日はとてもよく晴れていて。

清々しい1日になりそうな、秋晴れ。


早々と大学へ向かい、楽器の調整をする。

迫り来る緊張を押えながら、その時を待つ。



…さぁ、いよいよ開場。






「―――――――。」


愕然とした。




こんな人数、この開場に入るのか……?




「エイちゃーん!ギター持ってる!可愛いーっ!!」

がやがやと騒ぎながら押し寄せてくる人の波は留まるところを知らなくって。


ごくんと唾を飲む音が、やたらと大きく聞こえた。


「エイちゃん、大丈夫?」

ボーカルの先輩が、後ろから支えてくれた。

「…はい…」

「ギターが好きでしょ?それだけ思ってやれば、絶対に大丈夫」




先輩がニっと笑って手を離したその瞬間、ぱっと照明が落ちた。











ドンと地響きのように伝わる音は、今日もまた俺を酔わせて。


メインでないはずなのに、ここに乗せていくギターは。


まるでひとり舞台のように、華々しく感じられる。




…そう、ここがカッティングで、ここがアルペジオ。


ディストーションをかけて…。



そのうちにこっと、ベースの先輩と視線が合う。


ここは全体合わせて、こーだっ!


ジャンプして、どんっとね。


タイミング、ピッタリ!


先輩は馬鹿笑いして、弾きながらベースを高く持ち上げる。


俺も可笑しくなって、わざとにカッコ付けて弾いたりしながら、また笑い合って。



なんて、気持ち良いんだろう。


頭を緩く振るように髪を揺らして。


あぁ、俺は自由だ。


もっと、曲に溶けたい。


コイツと一体になって、もっともっと入り込んでいたい。


唸れ。


唸れ。


俺のギター。


そしてフィナーレは。


百花繚乱のように…








遠くからわっと歓声が聞こえてくる。

高鳴る鼓動をそのままに、ネックを掴む手が一層熱く感じられた。

そう、ステージは始まったばかり。

まだまだ、「ひとり舞台」は終わらない。






next


back


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送