6 暗闇の危険信号





祭りのあと。

昨日の打ち上げで疲れきった体を起こして、搬出に精を出していた俺は。

「…また、遅くなっちゃったなぁ…」

もう暗くなってしまった住宅街をひとり歩いていた。


「暗くなるのも、早くなったもんだな」

そう思いながら煙草をふかして。

何度目か忘れたけれど、昨日のライブをまた思い出してみたり。


「やっぱいいなぁ、ライブ」

人がいないのを良いことに、くすっと笑って、感慨に浸ったりする。






…と、その時。




「…!」


ふと、背後から視線を感じた。


「え…?」


どうして?最近、感じなかったのに…



俺は…素直に驚いてしまっていて。

気付いたときにはもう足が竦んでいた。


きっと…アイツ、だろ?

黒いサングラスに、黒い帽子で、長身の男…



全身がひやっと冷たく感じて。

冷や汗が伝っていく。




その瞬間。



ぐっと手首を掴まれ、ぐいっと上に引っ張られた。


「…ぅあ…ッ!」

見事に俺は体勢を崩し、地面に倒れ込みそうになった。

長身の男は。

それを防ごうとするように力を込めて俺の腕を引き、自分の胸に抱きとめた。

「っ…」

俺が状況を理解する前に、そいつはしっかりと両腕で俺を抱きしめて。

それはもう…力いっぱいに。

「…ぁ」

肺が圧迫されて、自然にうめき声が漏れる。

苦しい。

息が出来ない。


奴の手が俺の頬に触れる。

乱暴にぐいっと上向きにされて、流れ作業で口付けられる。




い っ た い な に が ど う な っ て ん だ




頭の中でサイレンが鳴る。

それは鼓動。

そして胸焼け。



「――――――っ!!!」



持てる力を全て使って、俺は奴を押し返した。

そしたらそいつは少しよろめいて。


「…はぁっ、はぁっ、はぁっ…」


呼吸を整えて、俺は思いっきり、そいつを睨んだ。


「…何で、こんなことすんだ」


そいつは何も答えない。



「何とか、言えよ!!」



…言い放った俺を、淋しそうに見つめつつ、そいつは背を向けて、歩き去っていった。


急に力の抜けた俺は。


「ワケが…分かんねぇ…」



地面にへたっと座り込んでしまった。




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